wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

和田光弘『植民地から建国へ』

本日は千里山、史料講読は結局2名が途中離脱・それ以外に無断欠席も多い…。そんな中で秋の講義に向けて衝動買いしていた表題書をようやく読了https://www.iwanami.co.jp/book/b450145.htmlアメリカ合衆国史を4冊で刊行しようという企画で、本書は建国直後の19世紀初頭まで。そのため半分は英領植民地の形成と展開を大西洋史の枠組みで叙述したもので、半分が独立革命とその後の国家形成について建国神話をめぐる「記憶史」の方法論から示される。いろいろ勉強になった一方で、「記憶史」は現在アメリカで「常識」になっている出来事が、現実にはどういうもので以下に集合記憶として定着していったのかという枠組み。そのため、「常識」に疎い身としては逆に入り込みにくいところで、先住民との関係・13植民地の性格の相違などをもう少し知りたかったとも感じる。なおジェファーソンと妻が連れていた奴隷(妻の父が奴隷に産ませたとされ異母姉妹にあたるという)との関係について、90年代にジェファーソンの子孫全員のDNA鑑定がなされたというのは、いかにもアメリカという印象。また内容とは関係ないが、節・項目の長さがまちまちで電車読書には不便。岩波でもここまで編集をしなくなったのかと思う。