wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

L・ダートネル『この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた』

本日はルーティン姫路。往復共に相変わらずほぼ爆睡状態だが、先日衝動買いしてしまった表題書を読了http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309464800/。訳者東郷えりか氏によると著者はイギリス・レスター大学の特別研究員として宇宙生物学を研究する傍ら、新聞・雑誌・テレビ出演などで科学の普及活動をしているとのこと。タイトル通り現代文明が崩壊したと仮定して、残されたものから原始生活ではなく、衣食住からはじまり、医学・機械・応用化学・天文学などを復興させる方法を論じた思考実験。着想としては面白いのだが、余りにも西欧近代科学中心主義で、イスラーム・中国など独自の発展を遂げたそれ以外の知識が無視されてしまっているようにみえる。また初期インターネット期的な集合知の発展という理想社会を前提に科学万能論が説かれているが、もし破局による人口激減という事態になれば、少数者による科学独占が生じることは容易に想像され、むしろ多様性は不可欠だろう。なお拙稿が掲載された論集が刊行されているようだが、当方には全く音沙汰がなく未読のままで、ここでも紹介できずにいる。ただいま問い合わせ中…。