wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

広中一成『牟田口廉也』

本日は国会図書館関西館で雑誌『刀剣と歴史』をPC上でめくり。新たに興味深い事例も見つけることができたが、まだあと10年分残り。来週は東京に私費で出かけ『刀剣美術』めくりをする予定だが、終わる見通しはなく、写本類については全く予定も立っていない。それこそ科研が欲しい仕事だが、研究者番号を持たない身としては詮無い話…。そんな中で電車読書は七月にまとめ買いしたシリーズの忘れていた大トリhttps://www.seikaisha.co.jp/information/2018/07/13-post-muta.html。盧溝橋で発端をつくり、インパールで終幕を決定づけた「愚将」の伝記。著者の見立てはもともと陸大・参謀本部というエリート街道を進んでいたが、二・二六で皇道派よりと見なされ、現場に左遷されて切れやすい性格のまま愚直に任務を遂行したというもので、日本軍の組織としての非合理性こそが問題だとする。それにしてもノモンハンの辻にしろ、最初の過ちが全く反省されることなく、ドツボにはまっていく猪突派と無責任上司たちにはあきれるしかないが、こうした日本軍を美化する言説がはびこる現代日本にも絶望しかない。なお著者は関係者にも取材して写真の提供などを受けているようだが、1966年までの戦後について有名な作戦を評価するイギリス軍参謀とのエピソードのみが触れられているが、それ以外の暮らしぶりも記してほしかったところ。