山本義隆『近代日本一五〇年ー科学技術総力戦体制の破綻』
昨晩は実家に宿泊し、冷蔵庫整理とゴミ出し。ここ二年ぐらいはかなり事態が悪化していたことを、賞味期限切れ・開封済みの食品の山から実感させられる。もう一人も外出する意欲を失ってしまい、これまでの親不孝のツケが一気に押し寄せたようだ…。そんななか読了した表題書は、書店で何となく衝動買いしてしまったものhttps://www.iwanami.co.jp/book/b341727.html。そこそこ勉強していたこともあって明治期までは余り新鮮さを感じることはできなかった。ただ専門化が進行する大正期以後については不勉強な部分が多く、いろいろ知るところがあった。また副題にあるように近年の総力戦体制論の枠組みにより、学振が1931年に成立したこと、封建的な人間関係・非合理な学閥の打破を唱えた小倉金之助(唯研、戦後は民科会長)による科学・技術の新体制論、戦後の「科学戦の敗北」から「科学立国」という、戦時体制と戦後の連続面が示されている点は興味深いところ。ただ著者は東大全共闘代表(大学院物理専攻中退後は予備校講師)という経歴を有するにもかかわらず、戦後史は原子力関係以外は叙述が薄く物足りないところ。もともと技術として科学が受容されたことに後進日本の特質が求められており、企業系の工学分野と学術系の理学分野との関係など、もう少し実体験も踏まえて書かれていればありがたかったのだが。