wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

原武史『日本政治思想史』

本日は姫路で近世文書の撮影助手。残念ながら不勉強で、中身はほとんど理解できないまま作業に従事。相変わらず生活リズムがつくれず、午後はヘロヘロになったが粗相はせずに終えることができた。行き帰りの新快速停車駅すら一部記憶にないほど爆睡状態だったが、以前に衝動買いした表題書の読みさしを読了https://ua-book.or.jp/cgi-bin/LaynaCart/Cart/LaynaCart.cgi?REQ=%8F%A4%95i%92%8D%95%B6&ORDER=&CD=1521&COLOR=&SIZE=&QUANTITY==。放送大学の教科書だが、一般的な理念系の思想史ではなく、著者がこれまで研究してきた天皇関連・鉄道・団地について、ダイジェスト的にまとめたもの。最初に丸山真男を取り上げて、西洋政治思想史をモデルにすることの限界が強調されており、そのなかで著者が切り開いてきた方法ということになり、関西私鉄についての所論は講義でも取り上げたことがある。本書の中では当方が読んでこなかった、大正天皇貞明皇后にはじまる神功皇后光明皇后を意識した動きが、大戦末期の宇佐・香椎宮への勅使派遣を経て、大元帥としての地位を失った天皇そのものの皇后的振る舞いが、現天皇・現皇后によって加速化されカリスマ性を増すとともに、昨年来の動きになっていること、68年の新左翼学生運動に対する天皇佐藤栄作の対照的な意識などは興味深かった。ただ全体としては都市的なものに偏っている傾向があり、著者が経験したソ連の教育学者マカレンコの影響を受けた集団主義的教育を典型的なものとするのは、大阪府とはいえ南河内の田舎世界(小学校の修学旅行は伊勢・中学は富士山)に育ったものとして違和感を感じるところ。割とそういう世界から研究者になった方々は身近にも結構いるのだが、全く別世界にしか思えないもので、全国的にはかなりまだら模様だったのが実態ではないか。