wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

樋上昇『樹木と暮らす古代人』

いろいろ切羽詰まっているのだが、昨日の新幹線で読了した電車読書の備忘を簡単にhttp://www.yoshikawa-k.co.jp/book/b243597.html。近年の問題関心もあって、秋の学会で衝動買いしてしまったもの。副題に木製品が語る弥生・古墳時代とあるように、木器の様式と編年を確立させることで、自給による個人のカスタマイズから専門工人による規格生産への展開、多様なルートの地域交流、威信材の見せびらかすものから隠匿するものさらには武器という首長層の性格変化などから、時代像を見通したもの。報告書で木器が時代を考慮せずに一括化されているという批判は恐らく正当で、図面が読めない身としてもいろいろ興味深かった。また岡山平野や濃尾平野の低地開発によって、木器が発達するというのも勉強になった。ただ木器の出土は保存条件に左右されるはずで、それに全く触れられていないのはやや疑問。また樹種についての分析は最初のみで、タイトルに釣られもう少し植生などとの関係については期待してしまっていたのだが、それはこちらの思い過ごしだったようだ。