wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

和歌山県立博物館「弘法大師と高野参詣」

土日月は和歌山で行われた科研文書調査の末端に連れて行ってもらう。第一線の研究者の鋭い視線により、一人で考えていただけでは到底たどり着けない解釈が示される醍醐味を、うぶな文書の前で味わうことができる幸せに浸る。ただ二日目夜のクーラに体がやられたらしく、三日目は睡魔で思考力が働かず、帰路の電車でもぐったりと寝てしまった。それはやや心残りだが、お付き合いくださいました皆様に感謝申し上げます。また調査の合間に担当学芸員のご厚意で表題の展覧会もご案内いただいたhttp://www.hakubutu.wakayama-c.ed.jp/kouboudaisi/frameset.htm。一連の「高野山開創1300年」に関わる企画だが、高野山から借りてくるのではなく、流出した文化財を中心に展示するという明確なコンセプトを持って立てられた企画とのこと。弘法大師像・「御手印縁起」の複数のバージョンや、能登法住寺におくられた鎌倉仏や、膝下に伝来する彩色が残る平安仏など貴重な文化財が並べられていた。また文書類が豊富なのもありがたく、有名な鞆淵八幡の木札を筆頭に、膝下に残る中世文書、近世の写しとはいえ原文書が残らない当方も未見の鎌倉後期の淀関所関連史料、金剛三昧院をはじめとする子院の伝来文書が多数あり、また当方が以前に中途半端な史料紹介をした参詣記も、ちゃんとしたバージョンで並べられていた。観光ポスター・廃村になった膝下の村の景観を絵巻化したものなど、近現代の史料にも興味深いものがあった。始まった最初の日曜としてはやや一般客が少ない印象もあるが、様々な観点から楽しめるものになっている。写真は調査で宿泊した旅館からの風景。国体と重なったため市内から離れた少し古びた旅館の相部屋だったが、十数年ぶりの修学旅行といった懐かしいメンバーとなった。
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