wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

菊池良生『ドイツ誕生』

本日は枚方定期試験。これで今期の非常勤でのお出かけはおしまい、あとは採点と追試のみ。電車読書の備忘はこれまたなぜか衝動買いしていた表題書。副題は神聖ローマ帝国初代皇帝オットー一世とあるように、その生涯をたどりタイトルに迫ったもの。ハンガリー軍への勝利が東フランクというまとまりを結束させたこと、イタリア遠征が「ドイツ人」意識を醸成させたこと、その一方で従軍の対価として諸侯に国王大権を与え、世俗領主を賢盛するために司教領に特権を与えたことで、「三百諸侯」が割拠する体制になったという。オットーのイタリア遠征の意図は帝権を確立するためのものであったが、結果的にまとまりと分裂というドイツのその後を規定したとするもの。趣旨はわからないではないのだが、途中で著者が示唆した西フランク(フランス)との関係は展開されておらず(ロートリンゲン大公領はマージナルな空間ではないのか)、それだけでドイツ人意識が継続するのかは疑問。また年代記によりひたすら抗争の繰り返しが叙述され、もともと苦手な上にそもそも背景説明がどこまで正確かもはっきりせずモヤモヤするところ。

『ドイツ誕生 神聖ローマ帝国初代皇帝オットー1世』(菊池 良生):講談社現代新書|講談社BOOK倶楽部