wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師・研究員などとして生活の糧を得ていますが、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

市川浩『ソ連核開発全史』

本日は千里山2コマ。傘は不要との天気予報を信じてしまったが帰りは冷たい小雨・・・。そんななか電車読書は何となく衝動買いしていた表題書。第二次大戦中の計画、原爆開発の過程(よくいわれるアメリカでのスパイ活動が決定的な役割を果たしたわけではないとのこと)、高度な自治を実現していた科学アカデミーのもと少数ながら計画から離脱した科学者もあったこと、たびたび事故を起こしていたこともあって英米の甘い放射線影響評価を批判し一方的な核実験停止も全くのプロパガンダというわけではなかったこと、むしろアメリカに先駆け原子力の平和利用を主張していたこと、大戦による膨大な戦死者と都市化で人口増加率が低くそのうえ常備軍兵士が多数あったため石油・ガスパイプライン建設がすすまず、さらに東欧などへの石油供給があったため、低コストの原子力発電が推進され、それゆえ安全性も軽視されたこと、ソ連崩壊後に自分たちの事績が後世に顕彰されて欲しいという理由から当事者によって大量の秘密文書が公開され、核開発の詳細が明らかになったこと、などソ連という摩訶不思議な国家の象徴的なトピックがいろいろ興味深かった。なお著者は大阪市立大学経営学研究科博士課程修了とのことで、一瞬接点があったような気もする。

筑摩書房 ソ連核開発全史 / 市川 浩 著