wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師・研究員などとして生活の糧を得ていますが、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

森万佑子『韓国併合』

本日はルーティン姫路。確定申告に関する書類について4年分とあわせて5年分も提出してくれといわれいぶかしく思っていると、館長室に呼び出され今年度で雇用打ち切り通告。知事選後の状況をみて来年度までかなと思っていたが、一年早かった。奇特な方がいらっしゃれば仕事ください。そんなかでも電車読書は続き、衝動買いしていた表題書を読了。著者は存じ上げなかったが、東大の地域研究専攻、韓国留学は歴史専攻で、主著は『朝鮮外交の近代』という方で、清朝冊封期、大韓帝国皇帝期の新国家像の模索、保護国から併合までの過程を、支配層の動向を軸にたどったもの。王妃閔妃を日本軍に殺害された高宗のロシアを頼った明朝をモデルにした専制皇帝指向が、支配層の不協和音を強め、統一的な国家像を描けないまま、大日本帝国の圧力に屈していった状況が叙述される。閔妃殺害実行犯を裁判にかけたとのみ記し(55頁)、無罪判決という結果を記さないのはどうかと思うし、高宗が天皇に譲位するという形式にしなかったことを強調するのは突拍子な印象を受ける。また併合の全体像という点では、日本人移民・朝鮮民衆の動向が不可欠だろうが、韓国支配層が何を考えていたのかは勉強になった。さらに併合に関わる日韓研究者の相違を紹介した上で、欧米条約体制に参入した日本と、中華を追求しようとした朝鮮・韓国では、残された歴史資料の性格が根本的に異なるため、対等に付き合わせて議論することは難しいとした上で、多くの朝鮮人が日本の支配に合意せず、歓迎しなかった一方で、日本が朝鮮人から統治に対する「合意」や「正統性」を無理矢理にでも得ようとしたとするのは興味深い指摘。

韓国併合 -森万佑子 著|新書|中央公論新社