wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

安田次郎『尋尊』

本日枚方3コマ、雨で自転車が使えず、しかも2週連続で帰路のバスが複雑な合流での渋滞に巻き込まれるなど、散々だったが何とか帰宅。電車読書のほうは昨年刊行だが今春の特別販売で購入したもの。すでに評価がされていたかと思うが、『大乗院寺社雑事記』を読むための手引きで、いくつもの記事の潤色(尋尊による正当化)や、周囲との人間関係の機微が指摘されている。一つ困ったのが以前に講義で取り上げたことのある愛満丸の件で、成人できない賤民身分という先行研究が全否定されている。論旨はある程度わかるのだが、成人後も幼名であり続けたことの説明がなされておらず、そこは引っかかるところ。なお長禄の神器回収で赤松旧臣に触れられていないのは、本書の範囲では必要ないと判断されたのか。

尋尊 - 株式会社 吉川弘文館 安政4年(1857)創業、歴史学中心の人文書出版社