wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

「親愛なる同志たちへ」

4月に見逃していたが、近所で1週間だけ上映されていることを知り本日鑑賞。1962年6月にロシア南西部の町ノヴォチェルカッスクで起こった労働者デモを暴力的に鎮圧した事件(公式統計で死者26名)を素材に、現地共産党委員会勤務の女性を主人公に描いたもの。発端となった物価上昇・物不足における人々の対応、スターリン批判の受け止め方、現地党・工場組織・中央から派遣されてきた幹部・軍・KGBなどの微妙な関係と責任のなすりつけあい、レーニン像を掲げたデモへの発砲による虐殺と隠蔽工作戒厳令下の連行など、あえてモノクロ映像にすることで、強いリアリティが感じられる。作品は2019年にロシア国内で撮影されたとのことだが、コサック弾圧の記憶、赤軍看護婦だった1944年にシングルマザー(相手は別に妻のある戦死した英雄とのこと)となった主人公など、地域の記憶の重層が図らずとも2022年につながっている。映画が最後に示したかすかな希望は今もあるのだろうか。

映画『親愛なる同志たちへ』公式サイト