wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師・研究員などとして生活の糧を得ていますが、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

松沢裕作『日本近代社会史』

本日は自治体史会議、ようやく史料編入稿までたどり着いたが、まだまだ前途多難。不規則になっていた電車読書もようやく一段落(また忘れないように願うばかり)。タイトルに惹かれ講義ネタになるのではと衝動買いしていたもの。日本近代社会を、先行する近世身分制社会を無計画かつ急激に解体されたことを条件として成立したため、社会集団の外皮に包まれていた「家」小経営がむき出しの状態になり存続を追求する必要が生じたとする。そこで「一か八か」のチャレンジに乗り出すどうかという選択を迫られ、秩序の流動化を一定程度抑制し、それぞれの経営が将来を予測できるようなルールを制定する組織として社会集団が改めて結び直されたとする。ただチャレンジを完全に抑制することはできず、抜け駆け可能だからこそ、相互に監視し合う「互いが疑心暗鬼に陥っている不安定な社会」となり、利害を共有しているという認識に立脚する労働組合のような団結を生み出すことが容易ではなかったとする。やや値段が嵩むのが難点だが、コロナ禍で執筆された講義録ということもあって著者の見解の全体像がわかりやすく示されており、幾多の変化があったとはいえ現代日本にまで引き継がれている問題。家事は祖母と長女が担い、夫が農耕・妻が副業に従事するという、農家内部の労働時間配分を示した表など、講義で利用できそうな図版もありがたい。

日本近代社会史 | 有斐閣 

久しぶりの歴研大会、これからビデオ視聴。