wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

郭四志『産業革命史』

本日は千里山2コマ。やや時間配分を間違えたが何とか片付けることができた。そういうわけで電車読書の備忘は、火曜日のこともあって衝動買いしていたもの。第一次(動力・エネルギー)・第二次(重化学工業)・第三次(コンピューター・省力化)・第四次(IoT・AI)による技術的なイノベーションがあったとし、その概要を叙述。その上で第四次の2010年代以降の状況について、ドイツ・アメリカ・中国・日本の対応を概観し、米中摩擦と今後を展望したもの。数字の説明で図表が多くない、明治日本について、政体を三権分立(全てが天皇にしか責任を負わない体制)・特許制度の整備(不平等条約改正のためにやむなくで、模倣技術の重要性を無視)・教育の普及(先行研究には誤読があり、職人の識字率はそれほど高くない)など地雷だらけという印象も受けたが、近年の状況が整理されているのは有益で、中国ハイテクの欠点(半導体の遅れ)と優位点(技術の台頭・GDP規模)の指摘は勉強になった。著者は中国出身で日本の大学院に留学しそのまま教員になったという経歴で、日本にやや甘すぎという感はあるが筆致はあくまで冷静。

筑摩書房 産業革命史 ─イノベーションに見る国際秩序の変遷 / 郭 四志 著