wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

佐藤千登勢『フランクリン・ローズヴェルト』

昨日記したように、朝をゆっくりすると通勤は読書時間になるため、積ん読だった表題書はあっさり読了。これまた講義がらみもあって衝動買いしていたもの。生い立ち(母の過干渉を受け流し内面の感情を押し殺した人格形成)・裕福なエリートとしての生活スタイル(祖先はオランダ移民で砂糖商人として富、遠く分かれたセオドアの姪を妻に、幼少期は家庭教師に学び夏はヨーロッパでバカンス、14歳から寄宿学校、腰掛け弁護士)・女性関係(妻との仲は冷え切っており、ポリオ罹患後も愛人をもつ)などオーソドックスな伝記の一方で、ニューディールジェンダーなどを研究していたという著者らしくアメリカ社会の構造と変化を追いながら、理念よりも諸勢力への政治的配慮を優先させた一方で、ラジオ演説など国民に直接語りかけ四選を果たした大統領としての歩みを示しており、世界恐慌から第二次大戦に至る経過について従来の知識を整理する上で大変勉強になった。もっと学者と近い人という誤解を抱いていたが、そうした名前はいっさい取り上げられず(ブレーンも信頼できる「友人」)、良くも悪くも「白人エリート政治家」というべき人物だったのだろう。それでも近衛とは大違いか。

フランクリン・ローズヴェルト|新書|中央公論新社