wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師・研究員などとして生活の糧を得ていますが、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

小山束『和算』

本日所用でほぼ読了した表題書の備忘。少し迷ってから衝動買いしていたもの。『塵劫記』を前史として関孝和による確立、高弟として兄賢明とともに関の著書をまとめ家宣・家継・吉宗に仕えた建部賢弘、流派としての特徴と発展、実用・趣味・師匠という三階層による受容と算額という文化、円周率・平面幾何学の発展の一方で物理学などとは連動しておらず証明ではなく帰納的に結果を推測するという方法論、明治初期の漢字による旧数学から西洋の新数学への切替をめぐる諸相、中国の数学の発展、と全体像が俯瞰でき勉強になった。数学もある種の芸能の一種として発展し(享受の三層構造)、「民間の学」だったため知的な土壌の広がりをもつ一方で、明治政府があっさり西洋数学に切り替えることが可能になったというのも興味深いところ。ただこちらが期待していた中世との対比、中国からの影響(そもそも算盤はいつ広がったのか)などが明確に述べられていなかったのは残念。このあたりは禅宗史の最新書に期待すべきか。先週JABEEの要求が届く。遠隔のためいつにも増しての作業量に途方に暮れている。論文集はまた先送りか・・・。

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