wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

エイコ・マルコ・シナワ『悪党・ヤクザ・ナショナリスト』

本日は、ルーティン姫路。いろいろやることが多いわりに頭がなかなか働いてくれず、やはり戦国は難しい。そういうなかで、通常の電車読書モードで読了した表題書の備忘。何となくタイトルにひかれ衝動買いしていたものの一つ。暴力と民主主義という緊張をはらんだ関係という普遍的な視点を設定し、幕末の「志士」からはじまる非政府集団としての「暴力専門家」の展開について描いたもの。博徒自由民権運動、初期議会政治と「壮士」、政党政治における院外団、国粋主義団体とファシズム、戦後フィクサーと60年安保における政府側で活動した暴力団組織にいたるまでをカバーし、有権者の拡大が直接的暴力よりも買収がより有効な手段になっていったとする。こういった視点での通史はあまり見かけず、それなりに日本側の先行研究も抑えており、当方の知らなかったことも多い。「志士」「壮士」「党人派」の連続性も興味深いところだが、「ウラ社会」は史料的制約が大きい分野で、本格的研究は今後の課題か。

朝日新聞出版 最新刊行物:書籍:悪党・ヤクザ・ナショナリスト