wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師・研究員などとして生活の糧を得ていますが、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

速水融『歴史人口学事始め』

本日は遠隔授業二回目。前回程のトラブルはなかったが、やはりいろいろ対処することがでてくる。いちおう授業時間中はチャットに張り付いているのだが、内容に関わるものはLMSメールで一つあったのみで、あとは技術的なことがチラホラ。そのためこの時間帯を電車読書に充てることにして、読了したのが表題書。ちゃんと履歴も存じ上げなかったので、衝動買いしていたもの。東畑精一実弟でいろいろあった末に西田幾多郎門下で哲学を学び東京で著述業を営んでいたらしい父親のもとで育ち(サロンには妹の夫である三木清も)、飛び級で一中(同級生に宇沢弘文)、慶応予科で敗戦、軍国主義に染まっていたわけではないが二年程のモラトリアム期間を経て、慶応でイギリス経済史のゼミにはいる。漁業史を担当している羽原又吉の誘いで卒業後に常民研で史料調査、慶応にもどり助教授時代に西欧留学、ベルギーでフランス人口史を紹介され、宗門改帳の知識があり帰国後はその研究開拓に邁進というもの。語学ができて(記されているだけでも、ドイツ語・英語・ポルトガル語・フランス語)、古文書が理解でき、二年間遊学させてくれる大学がおおらか、子どもの頃からの趣味をいかして鉄道ダイアをモデルとした世帯表を考案、それらが重なることによって希有な研究が生み出されたことが分かる。残念ながら具体的に歴史人口学を構築していくところは、著者自身の手によるものではなく、執筆助手・秘書(そういう人がいるだけで驚き)が既発表の文章をかき集めたためスカスカだが(刊行直前に著者は物故)、前半生だけでも興味深いものだった。筑摩書房 歴史人口学事始め ─記録と記憶の九〇年 / 速水 融 著