wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

斎藤英喜『増補いざなぎ流祭文と儀礼』

本日は組合の雑用で大阪へ。途中で書店に寄り積ん読が増えたこともあり、電車読書中の本書を帰宅後も読み進め読了。昨年文庫化されているのを書店が見かけ、衝動買いしていたもの。高知県物部村で祈祷活動をしている現役の太夫(2000年に88歳で逝去)に密着取材し、2002年に刊行された同名書に、その後の研究状況を示す補論二篇と著者自身のあとがきを加えたもの。陰陽道をベースとして修験なども採り入れた山の神祭祀、「中世神楽」と概念化される宅神祭、病者祈祷、奥義的な呪詛にいたるまで、祭文テキストと太夫の活動からその宗教性のあり方に迫り、教えられた最奥義についてはあえて触れないというところまで、著者の体験と合わせて、細切れの電車読書ではあるが何となくそのあり方を感じることはできた。ただ太夫たちの日常生活(専業で食べていけるのか)、祈祷を依頼する家の事情などについてはよくわからなかった。そもそも昨年史料調査を実施した中世槇山(大忍荘)で活動していたというのが購入の動機だったが、その点は補論で紹介されている小松和彦『いざなぎ流の研究』が中世以来の歴史的展開を描いているらしい。なお阿波南部から当該地域にかけては濃厚な民俗宗教が土着しており、それが先入観となって文献史学者が伝来文書を偽文書視するようにもみえ、そちらもおさえておく必要があるかもしれない。

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