wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

島根県立古代出雲歴史博物館「たたらー鉄の国 出雲の実像ー」

木曜日から山陰に出かけており、本日帰阪。詳細は明日記すが、とりあえず表題の展覧会のみここでは紹介。タイトルはややわかりにくいのだが、たたら製鉄の成立過程を「中世」に探るというのがメイン・テーマ。第1章「こうして鉄は生み出された」が完成形を絵図・遺構から示し、第2章「古代における鉄生産の展開」では出雲が必ずしも中心ではなかったことを、木簡・近江・東国などの出土遺物から紹介。第三章「鉄生産の技術革新」では遺構の変遷を示し、中国地方が優越しつつも安芸・石見が先行していたことを提示。第四章「くらしと流通のなかの鉄」では、中世における流通の発展こそがたたら製鉄成立の背景にあったことを文書・遺跡から示唆。第5章「鉄の国 出雲の繁栄」では近世の完成形を文書と鉄師の繁栄ぶりから提示するという構成。中世文書もいくつかならび、行く途中で同行者と話していた塩津港遺跡が大々的に取り上げられ、当方の扱った刀剣類も示されている。ただ企画者にもお話ししたが、「中世」というくくりでむしろ展示品は前期中心だったが、当方は「珠洲より越前」、すなわち室町期にこそ鍵があると感じており、発掘事例が乏しいとはいえ播磨についてももう少し評価してほしかったところ。なお天文とされる祭文はなかなか怪しげな口話体で、どう評価すべきか議論のある文書。なお展示は9月1日までで、しっかりした図録もあり興味のある方は是非どうぞ。島根県立古代出雲歴史博物館|サイト