wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

『九条家本紙背文書集 中右記』

本年出版された新史料集で、非常勤先の図書館に架蔵されているのを見つけ、さっそく借りてきたもの。三年前に盗難にあった牛を四条大宮で見つけたが持ち主が返さないという興味深い文書もあったが、かつて拙稿でも使ったことのある摂津国勘会公文類について、改めて気づいたことがあるので備忘を記しておく。本文書群は『平安遺文』・『大日本史料』3-25にまとめて収録されていることもあり、何となく平安後期の吉書だと思い込んでいた。しかし改めてみてみると、「高陽院田」「水成瀬行幸儲田」などの記述があり、どうも鎌倉前期まで増補が続けられているらしい。その点で単なる吉書とはいえず、かなり複雑な性格を考慮すべきだと思われる。新史料は新たな発見の一方で、謎もふくらむことになる。