本日は定期試験受験者141名。質問で大きなミスに気づいたが早めに訂正できてよかった。そういうわけで昨年末に衝動買いした電車読書の備忘www.iwanami.co.jp/hensyu/jr/toku/1411/500790.html 。シリアにある国際乾燥地農業研究センターに準研究員(青年海外協力隊員、大学院休学?)として派遣された際に、現地の乳文化と出逢いそれを研究テーマとすることを決め世界をフィールド・ワークしてきた著者が、専門書『ユーラシア乳文化論』をベースに岩波ジュニア新書として書き下ろしたもの。紀元前7000年紀に西アジアの脂肪酸分析で確認される乳利用について、ミルク・ヨーグルト・チーズ・バター・バターオイルといった乳加工技術体系の調査から、南アジアでは暑熱環境に規定されチーズ加工を欠いて受け入れられたこと(南方文化圏)、冷涼な北アジアでは西アジアの技術がクリーム分離・乳酒作成へと進化していったこと(北方文化圏)、さらに両者の重層地域が存在すること、その一方で西アジアの保存のためのチーズ加工技術は冷涼なヨーロッパで熟成チーズへと展開していったこと、東南アジア・日本を含む東アジア・新大陸などではミルク以外からカルシウム摂取が可能だったため非乳文化圏となったことが示される。気候風土に対応した技術の伝搬論として非常に興味深く、仔牛を母牛の側においた搾乳方法や、搾乳時期の気候による差異などいろいろ勉強になった。とりわけ日本史で一旦導入された乳利用が定着しなかったこと(著者は鎌倉中期までというが根拠は不明)はよく知られているが、ユーラシア大陸東部全域で乳文化が展開していなかったというのは初めて知った。試験前に図書館で昨年末に出た座談会を読んだ。どうして事情を知る中世史研究者が佐藤進一・石井進まで抹殺して神話のねつ造に手を貸すのだろうか。理解できない。