wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

山陰加春夫『中世の高野山を歩く』

本日読了の電車読書の備忘。吉川弘文館歴史の旅シリーズの一冊。中世高野山史研究の第一人者らしく、宗教権門としての高野山の歴史的歩みを縦糸にし、現在の写真と戦前の絵はがきで寺院などを紹介するというスタイル。文章も平易で高野山の歴史を知る上では格好な書といえるが、観光案内的な配慮はやや欠けているか。なお重源ゆかりの真別処円通寺については、本書でも入り口の写真しか紹介されておらず、現在も宗教的ベールに閉ざされていることが分かる。当方は著者に招かれて高野山大学で一年非常勤をしたことがあり(残念ながら嘱託講師になるためこちらから辞めなければならなくなったが)、その時にあちこち探検して廻って、初めて円通寺の存在に気づき驚いた次第。何か伝えているものはあるのだろうか。そういうわけで著者の生家も存じ上げているが、その詳細なルーツはあとがきで初めて知った。本年は高野山開創1200年となる。久しぶりに訪れてみたいものだhttp://www.yoshikawa-k.co.jp/book/b182061.html。本日は18年続いた非常勤先での最後の授業。時間割が固定されていたため顔見知りになっていろいろお話をする先生ともお別れのご挨拶をした。かつては300名以上いた受講者も、旧カリのみとなった本年度は10名を割ったが、割とまじめに取り組んでくれたのは幸いだった。