wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

京都国立博物館・名品ギャラリー

京都での非常勤も残すところあと2回とりな、本日は図書館で禅宗関係の書物を少しめくってから、バスで京都国立博物館に向かう。新装開館になってから名品ギャラリーは13室がほぼ一ヶ月単位で更新されていくようで、いくつかの展示に魅力を感じたためhttp://www.kyohaku.go.jp/jp/theme/index.html。彫刻は密教彫刻で、河内金剛寺本尊の大日如来像などの優品がならぶ。特別展示室は鰐淵寺で平安の神像類とともに古文書もいくつか展示されていた。その一つは建長六年四月日「出雲守護佐々木泰清下知状」と名づけられていたが、書出が「応令早停止鰐淵寺中并鳥居内別所等入部郡使事」・書止文言は「状如件」で「下知」という文言は全く見られない。それに配慮してか『鎌倉遺文』7741では「出雲守護佐々木泰清書下」とされるがそれも違和感。書体は上部の字が大きく下が小さい太政官符スタイルで、日付の後に「守護人検非違使従五位下左衛門少尉佐々木朝臣(花押)」とあり、わざわざ位階が記されているのも公式様文書を意識したもので、他に類例はあるのだろうか。なお他にも書止が「而已」にも関わらず寄進状とされるなど疑問があった。書籍は禅僧のもので無準師範のものや室町期に84歳が書いた字の乱れた遺偈などが興味がそそられる。絵巻は室町の是害坊・融通念仏・日高川草紙で、是害坊の湯屋場面が鴨川の水を汲んだものだというのは初めて知った。なお日高川草紙は道成寺縁起の異本で女性は遠江橋本の遊女という設定のようだが、龍になって追いかける巻の後半部分のみが出ており、遊女と僧の契がどのように描かれているかが気になるところ。仏画垂迹画で石清水関係や、三十番神の図像の上に南無妙法蓮華経とある本圀寺蔵のものも初めて知った。考古の馬町十三重石塔の納品などその他にも興味をそそられるものが多数あり、展示替えの度毎に行く価値はありそうだが、それすらかなえられそうもないのは残念。