wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

チスル

昨日は締め切り原稿の書誌情報を得るための市立図書館行き・増税前の書籍購入という所用があり、月曜男性1000円ということもあって、済州島4.3事件を題材にした表題作を鑑賞したhttp://www.u-picc.com/Jiseul/。上映20分ほど前に到着したのだがすでに87番目、最終的には100席少しをオーバーし、立ち見(正確にはクッションが配られ座り見)が20人以上出るという盛況ぶり。やはり料金のこともあり年配の男性が7割程度(隣席で差別的なつぶやきをしていた60歳前後の男性がなぜ来たのかは不明だが・・・)。内容はあまり事前にチェックしていなかったため、同じ日帝植民地支配からの解放・冷戦突入を背景とした台湾2.28事件を素材にした「悲情城市」のようなものを想像していたのだが、視野は極めて限定されたもの。スタート段階ですでに沿岸5㎞以内の住民殺戮命令が出されており、住民側も何となく危険を察知して山に避難をはじめている(足の不自由な老婦人は大したことないと居残る)。駐屯してくる部隊で一番偉いのも下士官レベルで、その後は軍隊内部の制裁、洞窟に避難した住民ののどかさを描きながら、女性への凌辱、村での虐殺、捕まった住民の自白から始まる最後の悲劇へと展開していく。映像はモノクロで直接的なシーンではなく隠喩で進められていくため、ホラー映画を見ているような印象だった。洞窟での住民の会話の中に植民地時代のわだかまりが示唆され、兵の一人が「親をアカに殺された」との台詞(追討軍には北朝鮮からの避難民がかなり含まれていたという)、山に青年達がこもっていること(事件のきっかけは南朝鮮単独選挙実施の反対運動)がほのめかされるが、余りにも断片的。実際に住民が避難した洞窟で撮影されているらしくその瞬間に起こったリアリティーは踏まえられているのだろうが、やはり植民地末期・光復からの時間軸がほしかったところ。なおエンディングテーマの歌詞字幕は済州島の海民をモティーフにしているが、これと本編では直接の関連が全くない。ただ幸いだったのは親しくして頂いている方と偶然出くわしたことで、劇場を出てから喫茶店で色々お話しすることができた。