wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

油井大三郎・藤田進『21世紀の課題』

研究意欲が減退する中、本年秋の学会で唯一購入したもので本日読了(本年度限りかと思っていた、唯一担当している専門科目に関する来年度の書類が本日届き少し安堵しているが)。油井「グローバリゼーションと周辺化」・「米国の中東政策とオリエンタリズム」、藤田「米国の『中東和平体制』に対抗するアラブ民衆運動」および、座談会「21世紀の課題とは何か」からなる。油井氏のものはグローバリゼーションに関する主要な論点が整理され、第二次大戦後からオバマ政権までのアメリカの中東政策が概観されており勉強になる。藤田氏のものは通史というよりいくつかのトピックに限定したものだが、生の発言が引用されておりこれも有益。何れにせよパレスチナ問題ほど理不尽なことはないと改めて再確認される。また座談会では某氏の茶々入れは別として、アフリカ・メキシコ先住民社会など各地におけるグローバリゼーションによる影響が紹介されており、現代世界を考える上でもいろいろ有益で、「グローバル・コモンズ」実現のための諸動向にもいろいろ励まされるところがあった。やはり歴史家の視点が必要なことが再認識されるhttp://www18.ocn.ne.jp/~yushisha/newpage21c.html。その一方で日本の将来は絶望的。現代史が存在しなくなるだけでなく、崩壊した社会の1000年前の歴史など誰にも関心が持たれなくなるという恐れが、現実味を帯びてきた。これから何をすべきなのだろうか・・・。