wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

河内将芳『日蓮宗と戦国京都』

夏休み前刊行にもかかわらず、本日ようやく読了。日蓮宗寺院が京都に進出した鎌倉末期から戦国末・本能寺の変までの、延暦寺・公武諸権力との関係を軸にした通史。延暦寺による弾圧をたびたび受ける一方で、柳酒屋などといった富裕な檀徒を獲得しつつあった室町期。幕府がはじめて保護する姿勢をみせるとともに延暦寺側の態度も微妙に変化し、日蓮宗側も「防戦」という法華一揆の先駆となった応仁・文明の乱期。公家衆をはじめとする広範な檀徒を獲得し軍事力を備えて山科本願寺を壊滅に追い込むも、逆に延暦寺武家権力によって下京焼き討ちとともに京都を逐われた天文法華の乱、再び復興するとともに会合を結び、武家権力には礼銭などで対応することで軍事対決を避けることを選択し、安土宗論後も信長によって敵視されずに乗り切ることで、秀吉権力によって顕密諸宗と同等の地位を獲得したと位置づけ、そうした長期の歴史的展開のなかに「戦国仏教」論が位置づけられる。一般向けの平易な文章ながら、実証的姿勢を貫き断定を避けているため、ややもどかしく思える部分もあるが、全体構想は非常にしっかりしており大変勉強になる。多数の著書を出しながら高度な学問水準を維持できるのはさすがというところ。ただしやはりあとがきはへりくだりすぎか。いまや戦国京都と宗教勢力では完全な第一人者でしょうhttp://www.tankosha.co.jp/ec/products/detail.php?product_id=1555。それにしても暑すぎ。汗っかきの上にクーラーには堪えられず、体調もなかなか回復しない。最近そればかり書いてしまっている。