wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

「中世の和泉国衙と荘園制」

昨春に原稿を提出し、先週手渡された『和泉市の歴史6和泉市の考古・古代・中世』第3部「中世和泉の権力と地域社会」第2章として掲載http://www.city.osaka-izumi.lg.jp/kakukano/syougaibu/bunkasinkou/osirase/1368687367556.html。いわゆる自治体史なのだが、他とは少し編集方針が異なっており、地域叙述編・テーマ編・通史編にわかれ、本書はテーマ編に区分される。各論者が比較的自由に論じるという方針のため、第2部「和泉と王権」などは古代史家6本の論考のうち5本で大化前代について突っ込んで論究する本格的な論文スタイルの一方で、8・9世紀の叙述はきわめて簡略になっている。第3部はそれほどでもなく律儀に政治史をたどったものもあるが、当方もある程度はテーマを立てて中世前期の和泉市域の特質を外から眺めたものとして叙述した。院による熊野詣の供給体制は重要な意味を持つためそれを時代的な括りとはしたが、政治史叙述はほとんどせず鎌倉幕府もいきなり外部から口を出す存在として登場させている。ただし地域叙述編が既刊3巻・未刊2巻のためその間のバランスを取るのに苦労し、中世和泉研究の大家が第3章「和泉郡の在地領主」を担当しているため、そことの整合性にも気を遣うことになった(その方のご協力を得て位置比定の困難な散在所領だらけの無謀な荘園分布図を掲載することが出来たが・・・)。前に多人数による自治体史の細切れ叙述に辟易としたことがあったが、これはどう評価されることになるだろうか。
追記1、鎌倉幕府成立に関して、故河音能平が強調していた松尾寺の義経文書の話は入れたかったのだが、紙数と構成上の都合で組み込むことが出来なかった。2、抜刷はありませんが引用させていただいた方々にはコピーをお送りします。しばらくお待ち下さい。