wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

河添房江・皆川雅樹編『唐物と東アジア』

本日の講義は完全に時間配分を間違えてしまい、いつも最後に集めている「講義のまとめ・感想」を書かせる時間を持てなかった。昨日丸一日かけて講義資料をつくったのだが、やはり盛りだくさんすぎたようだ。もっともそのおかげでいつもなら200名以上の受講者で2時間以上かかるカード・チェックをしなくてすんだので、久しぶりに電車読書の感想を残しておくhttp://bensei.jp/index.php?main_page=product_book_info&products_id=100049。これもその授業準備のために図書館から借りてきたもので、奈良時代から近世まで12本の論考と3本のコラムで構成された「唐物」論で2011年11月に刊行されたもの。不勉強で全く知らなかったのだが、唐をカラと読むのは、倭国と深い関係にあった朝鮮南部の加羅がもとで、そこから朝鮮全体を指す呼称になり、海の外の国全般を指す表現に拡大したということで、『万葉集』の「から」はその時々で指す対象が異なるらしい。なお「唐物」の初見は808年で、延暦遣唐使基調以後に用いられるようになるということ。その過程そのものが古代の対外関係の推移と対応しており、平安以後は中世を通じての輸入品としての「唐物」偏重につながるようだ。なお近世では「からもの」と別に「とうもつ」「とうぶつ」という表現が出現するようで、厳密に区別されていたわけではないようだが、中国以外からのものがそう呼称されることがあったらしい。論集ということで玉石混淆は否めず、互いの論旨に齟齬も見られるが、「唐物」の通史を知ることができ勉強にはなった。なおその前に読んだ『日本の対外関係2』は最悪。なかには興味深いものもあるのだが、一つの一つ論文が細切れ過ぎて全体像がさっぱり伝わってこなかった。