wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

大阪市関連博物館見学記

本日は午前中から組合の雑用。夜は飲み会が入っていたので、昨年当選した新市長により危機に陥っている大阪市文化施設の展示(リバティは予算ゼロになるという)二件を、地下鉄エンジョイエコカード(私鉄にはないお得な乗車券だがこれも民営化されると廃止されるだろう)を利用してめぐる。まずは大阪市立住まいのミュージアム「『大工頭中井家関係資料』重要文化財指定記念 大坂の陣大坂城四天王寺住吉大社の建築 世界遺産をつくった大工棟梁ー中井大和守の仕事Ⅱ」http://konjyakukan.com/kikakutenji.html。当館が調査してきた幕府大工頭中井家の資料が重要文化財に指定されたのを記念して豊臣および徳川の大坂城方広寺などの指図および中井家文書、四天王寺関連史料などを集めたもので、指図・古文書とともに四天王寺・住吉社絵図なども並ぶ。優品揃いで中井家所蔵の大坂城書院の立体模型など珍品もあり充分に楽しめたが、残念ながら客はまばら。京都・奈良など現存寺社の多数も中井家による造営にもかかわらず一般には周知されていないようだ。市長につぶされないよう願うばかり。続いて大阪城天守閣「世情ー大阪城天守閣風俗図屏風にみる」http://www.osakacastle.net/exhibition/special.html。こちらはさすがに天守閣そのものの入館者はエレベーターに行列ができるほどあり、中国語・韓国語の話者も多数。近世初頭の風俗図屏風が多数並び圧巻の展示で、当初の目当ての石曳図屏風も迫力があった。それ以上に興味を引かれたのが林家本洛中洛外図屏風で、鴨川に4箇所の芝居小屋が描かれ、現木屋町には薪が集積された家屋が並び、ほとんど樹木が描かれていない周囲の山や御土居も確認することができた。不勉強だったが近世初頭の光景を描いたものとして大変勉強になった。幸か不幸か絵巻にもかかわらず観覧者は驚くほど少なく熟覧することができたが、夏の陣図屏風の徳川本陣を探す労力を払いながら風俗図屏風にはこれだけの絵を見ながら意味がわからないという20歳前後の男性数名に落胆させられるばかり。さすがに市長もつぶすことはないだろうが博物館展示に対する理解度がこれだと先が思いやられるところ。