wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

趙景達・宮嶋博史・李成市・和田春樹編『「韓国併合」100年を問う』

今日はダラダラと授業準備で、表題書は前日には読了していたもの。以前に取り上げた国立歴史民俗博物館編のものとセットで刊行されたものだが、本書のほうは『思想』2010年1月号を再録したもので、新本では見送ったのだが古本屋で見かけて、最後に63点の史料編が追加されていることもあって購入してしまったもの。前者のうち宮嶋博史論文はすでに読んでいたが、儒教モデルを受け入れなかった日本の辺境性とそれを認識できない日本史研究者への痛烈な批判は、その成否を置いてやはりインパクトがある。それ以外についてははじめて読むものだが、東学農民軍への一方的な殲滅作戦の実像が明らかにされ、近年は美化されがちな伊藤博文については踏み込んだ考察がされている。また台湾と朝鮮の支配体制がかなり異なっていたことが実証的に示されているのも興味深く、前近代における神功皇后伝承の普及と征韓論についての論考も勉強になった。久米邦武・喜田貞吉・三浦周行など近代歴史学のそうそうたる担い手達の朝鮮認識のゆがみも再認識されるとともに、もっとも専門的に取り扱っていた池内宏が彼らとコントラストをなす孤高の姿勢を保っていたという評価もはじめて知った。先のものと同じく官僚以外の渡海日本人について触れられていない点は不満が残るが、この二冊で研究の現状は理解することができたのではないかhttp://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/02/6/0258030.html。夏の案内が続々と舞い込んできている。福井に行けなくなったためかえって願望が深くなり、どうせなら河野浦へと思ったら余りにも公共交通機関の少なさに愕然とする。やはり車に乗れないのは不便だ。滋賀は見学地が何れも未到の場所だったため参加を申し込んだが、神奈川はどうしようか思案中。