wsfpq577’s blog

日本中世史専攻、大学非常勤講師などで生活の糧を得ていますが(求職中)、ここでの発言は諸機関とは全く無関係です

尼崎市立博物館「尼崎城を掘る」

企画展が来週までということで、観覧に出かける。開館以来第三回目で第二回目は行けなかった。1987年以来、開発のたびに調査が重ねられてきた(紹介されている最新は110次)成果を紹介したもの。鯱瓦から日常雑器まで、土人形、高級塩の商標つき焼塩壺(なぜか堺が目立った)なども展示。中世の瓦も出土しているようで本興寺跡と想定されている。なお常設展示でも寿寧院所領目録(四行ぐらいでの折本というのは初めて知った)などいくつかの文書や、大物遺跡など三ヶ所から出土した鎌倉期の「蘇民将来札」などもあり興味深いところ。なお写真は大物にあり、近く取り壊し予定の尼崎紡績本社事務所。尼崎城を掘る | 開催一覧 | 展示 | 尼崎市立歴史博物館  

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岩崎育夫『近代アジアの啓蒙思想家』

本日は公務出張で歩きづめ。日差しはきつくなかったが、山登りもあり替えのTシャツもビショビショに。例によって詳細は記さないが、立ち寄った博物館展示はなかなかのもの書写の里・美術工芸館|夏休み子どもミュージアム。ここでは読了した電車読書の備忘のみ記す。秋の講義(リモート・対面が混じりそうで、JABEEのつじつま合わせが悩ましいところ)のこともあって衝動買いしていたもの。日本(福沢諭吉)、中国(陳独秀胡適)、インドネシア(カルティニ・ハッタ)、インド(ネルー・ガンディー)、朝鮮(朴泳孝など)・ベトナムファン・ボイ・チャウなど)・タイ(チャラコンロンなど)・シンガポール(リム・ブーンケンなど)・トルコ(ムスタファ・ケマル)といった19世紀後半から20世紀前半のアジアの啓蒙思想家を取り上げ、儒教イスラームカーストなどかれらが対峙した伝統思想との関係、近代思想をうちたてるとともに植民地大国でも会った西欧への意識、最初を走り影響を与える一方で欧米に倣った帝国主義的ふるまいを実践した日本のポジション、その後の共産主義の受容や建国の特質などを整理。北部ベトナムを「グエン国」と表記するのはどうかと思うが、インドネシアオランダ語を習得し手紙が公刊されたことで25歳で死去したにもかかわらず大きな反響を得たカルティニなど東南アジアは知識不足だったため有益。講義資料の写真の差し替えもできそう。

『近代アジアの啓蒙思想家』(岩崎 育夫):講談社選書メチエ|講談社BOOK倶楽部

サンマデモクラシー

ワクチン副反応は日曜日いっぱいで一段落。第一回目に出た接種付近の肌が赤くなる現象も今のところなし。ただ接種時に立ち寄った図書館である本を確認するのを忘れるという大ミス。本日出かけついでにサービスディで表題の映画を鑑賞。米高等弁務官布令に明記されていなかったサンマ(もともとマグロの餌として本土から輸入され食用にもなったとのこと)に関税が賦課されたことに対し、玉城ウシという女性商人が裁判を起こし勝利したという経過をベースに、ウシの生涯(漁民集落として知られる糸満出身で、次妹はフィリピン移民で日本兵に殺害されたとのこと)、弁護士として支援した下里恵良(戦前は興亜運動にかかわり、沖縄に戻りラッパと呼ばれ大言壮語で知られたという民族保守系政治家)、第二次サンマ裁判の法廷が琉球政府から米軍に移った際に反対運動の中心にいた瀬長亀次郎、沖縄現代史を、ウチナーグチ落語家の案内で、インタビュー・記録映像・再現ドラマを交えながら、川平慈英のナレーションを載せたもの。下里の戦前の履歴が矛盾しているように見えたが、テンポよくわかりやすく示していた(観客は三人のみだったが・・・)。布令を発したキャラウェイの「自治は神話」発言を、運動の原動力として示し、最後に辺野古基地をめぐる翁長・菅会談で呼び起こすというのも秀逸。

『サンマデモクラシー』公式ホームページ

ワクチン接種その後

昨晩ここにたどりついたが、やはりしんどく、何とかシャワーだけ浴びて布団に。体感一時間おきぐらいに麦茶を飲みながら朝七時前に起床。朝食を作りもう大丈夫かと思ったが、再びしんどくなり昼間で布団に。その後は買い物、図書館で借りてきた醍醐寺文書17めくりなどをして夕食。夕方は36.8度だったが現在は37.0度、もう収まってほしいのだが・・・。

平賀緑『食べものから学ぶ世界史』

本日はワクチン二回目(モデルナ)。11時前に接種して先ほどが最もきつかった、ただ体温計が電池切れになっており、正確な数値は不明。それでも電車読書だけは片付けておく。近代世界システムの成立(砂糖)、過剰生産と世界恐慌(小麦)、戦後の大量生産・大量消費(「デブの帝国」)、「南」の途上国(「緑の革命」)、日本における食と資本主義(著者の専門は植物油)、グローバルゼーション(「中国の豚」)と、食糧供給システムの変遷から世界経済史をたどったもの。岩波ジュニア新書という媒体とは思えない参考文献はどうかとも思うが(いちおうクリアしているのは『砂糖の世界史』のみ)、後期の一年生向け講義の参考文献には掲げられるか。なお著者は大学卒業後に、香港に留学・就職、そこで鶏をさばき、丹後で自給自足生活、ロンドンで修士、京大経済で博士(指導教官は岡田知弘氏)、京都橘准教授で、カタカナ名前の亡き夫への謝辞で終わるという、すごい遍歴。このパワーがなせる力業。

食べものから学ぶ世界史 - 岩波書店

石川禎浩『中国共産党、その百年』

引き続き電車読書の備忘、評判を目にして衝動買いしていたもの。第一章革命の党の出発、第二章権力への道が、結成から人民共和国建国までの歴史。第三章毛沢東とかれの同志たちが、毛沢東の一生とその影響力。第四章人民共和国の舵取りが文革まで、第五章革命を遠く離れてがデジタル社会まで、おわりにー百年目の試練で新型コロナウィルスをめぐる一連の対応までが叙述される。あとがきまでで362頁と大変長いのだが、説明はわかりやすく、おりおりの流行歌をめぐる13のコラムによって文化的変遷も示される。これから10年、中国の動向と温暖化が人類社会の存立に決定的岐路をもたらすと思われ、その点でも抑えておきたいところ。なお著者は結党時から共産党は会議と文書主義を貫いており、文革以前の共産党史料は存在するが秘匿されているとみている。それが事実ならその行く末も注目される。

筑摩書房 中国共産党、その百年 / 石川 禎浩 著

神戸市立博物館「伊能忠敬」

大雨だったが自治体史がらみで図書館に本を借りに行くついでに観覧(甲南の非常勤をやらせてもらっているおかげで通勤扱い、もっとも博物館から中央図書館まで適切な交通手段がなく、靴の中までビッショリになった)。お目当てはこれまた仕事がらみで、鳴門海峡を描いたものを確かめるため。幕府に上呈されたものは焼失してしまったが、各地で大名の求めに応じて納められたもののいくつかが遺されているとのことで、蜂須賀家のものがその対象。ケース越しで遠く、しかも字の向きがバラバラで、判読は大変困難だったが、単眼鏡に張り付いていくつかの地名を読み取ることができた。ただ完全ではなく、何とかデータを手に入れたいところ。大雨だったが、独占するのはやや気が引けるぐらいに客は入っていた。なおなお無料の常設内で「太山寺文書からみる中世の神戸」で文書が五点ほど展示。驚いたのが建武三年八月六日付「足利直義禁制」(県史24)で、ガラスケースにメジャーを当てての目算が縦37㎝・横21㎝ほど。直義の花押のある正文だが、不勉強の身には余り見ない形状。神戸市立博物館